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クリスマス

日常

クリスマスにはいい思い出がない。

正確には、いい思い出も悪い思い出もない。

もっと正確には、何も感情がない。

こんなに世の中が浮かれる季節に何も心が動かない人間ってのも珍しいだろう。

なんとなく街並みが華やいで洒落た音楽が流れてるって位にしか思わない。

どうして人はクリスマスに魅かれるのか。

それだけ楽しいものなのか。

人並みにクリスマスというものを楽しみたかった。

青春時代を司法試験に捧げた俺にとっては、もう取返しもつかないんだが。

まるで悪い男に大切な処女を捧げてズルズルと遊ばれた類の哀れな女のようだ。

時間なんて返ってこない。

気づいたときにはもう取り返しがつかない。

今更ながら、司法試験に注いだ熱情を馬鹿みたく恋愛にでも注げばよかった。

そのほうが人生、より彩りに満ちていただろう。

切ない気持ちや、人を自分より大切に想う気持ち。

当たり前に経験するはずの事をすっ飛ばしたもんだから、そんな感情全くもって欠如したまんま中年になってしまった。

そんなもん本当にあるのかよ。

存在するのかよ。

もう一度人生が送れたら。

もう一度人生をやり直せたら。

恥ずかしいくらいに人を好きになったり、人から後ろ指差されるくらい金稼ぎに夢中になったり。

もっと勉強したかった。

もっと恋愛したかった。

もっと友達を作りたかった。

もっとお金を稼ぎたかった。

もっと楽しい時間を過ごしたかった。

もっと正直に人生を歩んでみたかった。

もっと。

もっと。

もっと自分本位に。

自分の人生だから黙ってろと胸を張って生きてみたかった。

まったく。もう。

クリスマスソングなんてやめちまえ。

俺にとってはこんな感情しか湧いてこないんだよ。

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