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アルバイト先のアルマさん5(午前編)

恋愛日記

おっすぅ。

オラ八神ぃ。

いっちょ振ってみっかぁ。

失意の中ブログを更新しています。

みなさん、お察しのことと思います。

では、当日の詳細をご紹介します。

今回は大作になるので、午前編、昼休み編、終業後編と3部作にします。

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朝AM5:00

中年の朝は早い。

この日はいつもより早めに目が覚めた。

理由はわかっていた。

今日はアルマさんと話せる最後の日。

まさに、司法試験最終日といったところ。

気合いを入れない理由が見当たらない。

疲れた老体に鞭を打ち洗面所へ向かう。

徐に髭剃りに手を伸ばす。

まるで侍が刀を取るように。

念入りに髭を剃る。

その所作たるや、もはや職人である。

髭剃りが終わると、すぐさま歯ブラシに持ち替える。

いつもより多めに歯磨き粉を付け、寝起きの中年の悪臭漂う口内にブラシを突っ込む。

公衆便所の便器を擦るが如く、入念かつ丁寧にゴシゴシと研磨する。

一連の流れを3度繰り返す。

口臭は強烈なアメリカザリガニ臭から田舎町の漁港レベルまで低減した。

続いてマスクの処置である。

黄ばんだウシノマスクに、市販の消臭剤をふりかける。

ほのかに牧場の香りがするが、まずまず。

完璧である。

続いて飯の準備。

築40年の薄汚れた台所で、炊き立ての白米をサランラップに包んでいく。

乱暴ではあるが仕上がりは見事。

司法試験時代に体得した秒速おむすびである。

手についた米の粒に貪りつく。

準備は整った。

さあ。

出陣。

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侍が戦地へ出兵するが如く、気合いを入れてバスに乗り込む。

使い込まれたリュックサックからウシノマスクを取り出す。

バス内は相変わらずの3密状態。

しかし、この3密も今日が最後。

3密さえ愛おしく思える。

その理由は、そう。もうすぐアルマさんに会えるから。

倉庫へ到着すると、早速アルマさんの姿を探す。

アルマさん、

アルマさん。

、、、、、、、、、、、、、

ピッカーン!ゴゴゴゴゴゴゴ。。

八神の眼(まなこ)は、後光の差す人物をとらえた。

明らかに後光が差している。

女神か。

いや、

アルマだ。

華奢で色白な肌、小綺麗に手入れされた黒髪。

知的さを漂わせる眼鏡の奥に凛とした意思が宿る。

地味だが丁寧にアイロンを施された清潔なシャツ。

その上から主張しない胸の輪郭がふっくらと浮かび上がる。

少しばかり紅潮した頬が妙に艶っぽい。

遠目から見ると、眼鏡をかけた小西真奈美そのものである。

「君は綺麗だ」心の中で思わず呟く。

八神の心拍数は急上昇。

と同時に幾何かの男性特有の劣情を催す。

漏れ伝うような心拍音が自分でも理解できる。

これが恋というものか。

遅れてきた青春を取り返したい。

3分の1の純情な感情と3分の2の卑しい欲情が攻防する。

頭の中でぐるぐると卑しい考えを巡らせていた刹那

なんとアルマさんがこちらに接近して来る!

攻撃は最大の防御という言葉を思い浮かべる。

攻めるしかない。

一握の勇気だかを振り絞り、アルマさんに先手で声をかけてみる。

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八神「ぉぉおん、んほ、、、、ぉおはようがざいますぅ、、」

口臭に細心の注意を払いながらマスクに手を当てる。動揺を悟られないよう明るく振舞い虚勢を張る。

アルマさん「あ、おはおうございます!」

女神。明らかに女神。

血管が透けて見える程に白い肌。

少し汗ばんだ肌がまるで風呂上がりのようで異常なほど色っぽい。

シャンプーだかの淡い香りが中年の嗅覚を直に刺激する。

優しい匂いに、八神の身体は下劣な欲に素直に反応した。露になった汚れた妄想が脳内を一瞬にして支配する。

履き込んだズボンの先端が急激に角度を上げ、その先端部分は油と海鮮の臭いに満ちているのがはっきりと理解できる。

湧き上がる卑しい欲を制圧し、必死に応戦する。

八神「ぁぁん、んほ、、、、今日で最後ですねぇ。。」

鼻息交じりの言葉は空中分解し、気の利いた言葉を発動できない。

このあたり安定の八神である。無念。

アルマさんの澄んだ瞳は八神をとらえて離さない。もはや直視できるはずもない。

ズボンの先端は東京スカイツリーの如くいよいよ突き上げている。

かかる状態を悟られれば一巻の終わりである。

万事休す。

アルマさん「ぁあ、そうですねぇ、早かったですねぇ」

相変わらず至近距離から放たれるシャンプーの香りに中年八神は卒倒寸前。

はっきり言おう。大好きだ。

これが年頃の女子というものか。

八神の脳内は目の前の生物を、女子として理解するかはたまた雌として理解するのか混乱を極めていた。

激しい葛藤を繰り広げた末、発した言葉が

八神「んほぉ、ぁぁん。司法試験頑張ってくだださいねぇ、、んほぉ、、。」

なんでやねん、人気関西芸人張りの突っ込みを自分に浴びせかける。

自分から話を終わらせてどうしようというのか。

室内はもはや八神の鼻息しか聞こえない。

アルマさん「ぁあ、はい、でもなかなか勉強進まなくてですねぇ、、」

これは八神、チャンスなのか。チャンスなのか。一気に巻き返せ。アルマさんは何かを求めている。

八神「っんほぉ。。んふぅ。」

ただただ鼻息を漏らす八神。倉庫の控室に八神の鼻息だけがこだまする。手熟れのチャラチャラした若い男子ならば、ここでLINE交換に踏み切るんだろう。

アルマさん「今日も頑張りましょうね!」

終止符。綺麗なお手本のような終止符。

この綺麗な終止符には理由があった。

そう、チャラ男である。

チャラ男がアルマさんの横に接近していたのだ。

優しいアルマさんはチャラ男の存在に気を遣い、私との会話を切り上げたのだ。

チャラ男は、破棄物を見るように私を蔑み、敵意と悪意に満ちた視線を浴びせかけた。

勝ち誇った顔をしていた。

この面構え。

この感覚。

どこかで覚えがある。

そう。

9月に毎年味わうあの感覚だ。

頭脳明晰な若手合格者がこれ見よがしに脱落した中年を蔑む。

心が折れた。

アルマさんを奪い、軽快に会話するチャラ男。

二人は楽しそうに控室を後にした。

控室に取り残されたのは新築のスカイツリーを装備した中年男性一人。

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昼休み編へ続く!

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